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トヨタ生産方式は、なぜ製造業のバイブルとなったのか。


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こんにちは、ほけきよです。

最近トヨタ生産方式を叩き込まれる機会があったので、自分なりに本を読んだり実践したりして、なぜすごいといわれるのか、どうすごいのか、なぜ製造業で使われるのか。を自分なりに理解してかみ砕いたので、内容をまとめてみました。

トヨタ生産方式の起こり

トヨタ生産方式(TOYOTA Production System : TPS)とは、トヨタが提唱する製造業でのモノづくりの仕組みである。

戦後、トヨタが車を発展させたいというときに、アメリカと生産効率が天地ほど違うことに気づいた。そのうえ、アメリカは車文化が根付き始め、大量生産方式が採用された。いわゆる「たくさん作れば安く売れる」業界になっていた。一方で、トヨタはというと、誰が何を買ってくれるかもわからない状態で物を作らないといけない。いわゆる少量多品種生産。

大量に作ったとしても買ってもらえなかったら儲からない。そして頭をひねって作り出されたのがトヨタ生産方式なのである。

なので、トヨタ生産方式は、誤解を恐れずに言うと、「業界内で立場が弱い企業」の戦略とも言える。

トヨタ生産方式の理念「原価低減」

最も重要な前提が、「製品の価格は自分たちで決められない、買い手が決定する」というところ。利益 = 売値 - 原価 なので、利益を上げるためには原価を下げるしかないことになる。

原価を下げるために大事なことが無駄を省くこと。在庫、労働時間、材料費...原価にかかわるムダを品質を維持したままで削っていく。特にトヨタ生産方式では、二つのムダに大きくフォーカスしている

  • 在庫を抱えるムダ
  • むやみな労働時間のムダ

徹底的に利益を追求するのが、トヨタ生産方式。生産性が上がっても、在庫になってしまうと意味がない、必要なものをどれだけロスなく作れるか、を根底とした戦略である。

在庫を減らすための、Just in Time方式

いつ受注が来るかわからないのに、材料を大量に買い占める。それが結局在庫になってしまう。そんな問題を対処しようとに考案されたのが「Just In Time」。必要なものを、必要な時に、必要な量だけ作る方式である。

どうすればそれが実現できるのか、ヒントはスーパーマーケットにあった。 スーパーマーケットは、だれが何を買うかわからない。なので、商品が少なくなったら足すという仕組みになっている。これを製造業にも応用した。

つまり製品が一個組み立て終わったら、前に材料を取りに行くようにしたのだ。前の人ができたら後ろの人に渡すだと、作りすぎがおこるが、完成品ベースで後ろからさかのぼることで、在庫を極力減らせられるようになる。

人には付加価値の高い仕事を。自働化

もう一つが、自働化である。機械が自ら働くとは、どういうことか。

製造業であってはならないことの一つがラインの異常による事故不良品の生産である。機械が自動になっても、これを人がいちいちチェックしていては労働力が減ったことにはならない

異常事態のときは止まり、人に知らせられる機械じゃないと働いていることにはならない、最後までちゃんと面倒をみられるような機械じゃないとダメだ。というのがニンベンに込められている。

トヨタ生産方式が輝ける「条件」

データ分析業界で働いていた私は、ふと、「あの界隈でトヨタ生産方式で聞かないな」と気づいた。しばらく働いていると、両者の違いに気づいた。

トヨタ生産方式には輝ける条件がある。

私が思うその条件は、以下の3つ

  • 買い手と原料供給者が異なっている
  • 製造過程が多段
  • 在庫に賞味期限がある

これら3つの条件と、データ分析系業界が少し相性が悪いのでは?と思う。*1

買い手と原料供給者が違う

いわゆる「仕入れ」である。

データ分析業務などは、原料を握っているのはクライアント側である場合が多い。クライアントが必要だと思う量のデータなんだから、無駄はなく、もとから在庫など抱えることはない。それに付加価値をつけて提供するのがデータ分析業務である。

その一方で、製造業は、発注をかけられたら、その分材料が必要になり、別の業者に発注をかける。必要量は各々が判断しないといけないので、判断を誤ると大変なことになる。 *2

製造過程が多段

次に、製造過程が多段であることがあげられる。 多段であればあるほど各段階に能力のばらつきが起きやすくなる。 能力の低いところがボトルネックとなって、無駄な在庫が増えてしまったりということがある。

また、各過程でのばらつきは、後ろに行けば行くほど拡大していく。*3

そんなときは、ボトルネックとなっているところを見つけやすくしたり、 ばらつきを抑えるように うまく調整するような仕組みが必要となってくる。

在庫に賞味期限がある

作ったものがいずれ必ず使われるのであれば、心配せずに在庫をどんどん生み出せばいい。暇なときに作り置きすればいい

しかし、モノに賞味期限があるときは話は別である。食品は腐る。製造業でいえば、在庫が消化される前に注文の商品が変わるなど...

そういうことが起こるようなときは、やはり過剰な在庫はムダになってしまうのである。

なぜトヨタ生産方式が製造業のバイブルなのか

もちろんシステム自体よくできていて、トヨタ生産方式が輝ける条件に製造業はほぼほぼ当てはまるわけだが、頭のいい人たちならこのくらいの仕組みはトヨタの社員でなくても思いつくのではないのか?と思ってしまう。

数週間実際に体験して、なぜトヨタ生産方式が製造業ですごいといわれるのかが少しわかった気がする。

  • 言葉遊びのような用語
  • 誰にでもわかる平易な説明
  • 誰にでもできる平易なシステム

これらには、作った人の強い哲学めいたものを感じる。

言葉遊びのような用語

トヨタ生産方式には、「トヨタ用語」と呼ばれる言葉がいくつも登場する。 印象的なのは、既存の言葉をいじった言葉遊び的な用語が多いこと。例を挙げると

トヨタ用語 一般用語 違い
自働化 自動化 機械がただ作業するだけでなく、人の負担が減るように動作すること
可動率 稼働率 生産能力に対しての割合が稼働率、一日に生産しなければならない個数に対しての割合が可動率
死料 資料 伝わらない資料は無駄な死料

トヨタ生産方式が目指すべきところをたった漢字一文字で印象付けられる。このように、用語が洗練されているところが、強い。

誰にでもわかる平易な説明/システム

頭のいい人たちが行う説明や、作るシステムは、現場の人にとっては使いづらくなることがままある。しかし、トヨタ生産方式には、そのようなことがない。工場で働く人でもわかるように、わかりやすい言葉、何度やっても絶対に間違えないようにするシステムが出来上がっている。

不必要な説明を省き、必要な説明だけ残す。複雑な工程をうまくシステム化して簡単に見せる。

ぱっと見て、簡単に作れそうだと思うが、たぶんほとんどの人はまねできない。 上司に言われたことは、「手順はなるべく3つまでで完結させること。それ以上は忘れるから。」と。そういう思想が根付いている。だらだらと書くのは案外簡単である。本質を失わずに簡潔なものを作るのは、思った100倍難しい。

トヨタ生産方式の説明には、ある種「引き算の美学」のようなものを感じる。

まとめ

トヨタ生産方式についてまとめてみました。目まぐるしく移りゆく時代の中で、トヨタ生産方式が古いという意見もあります。もちろんメインのシステムは60年も前に確立されたものなので、確かに現代に通用しないところもあります。ですが、トヨタ生産方式の核となるところは方式そのものではなく、「なんでトヨタ生産方式を編み出したのか」、「なんでトヨタ生産方式が広まったか」をたどったところにあると感じました。

方式の丸暗記というよりかは、そのあたりのある種哲学的なところを理解すると、結構応用範囲も広がってくるのではないかと思います。

そういう哲学に一貫性があるがゆえに、製造業のバイブルとなっていったのではないかと思います。内容もさることながら、いろいろと学ぶべきところは多いなと感じました。

この記事だけでもかなり書きましたが、もっと興味のある方は是非、勉強してみてください。ではではっ

トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして

トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして

*1:私が知らないだけでもしかしたら使われているところもあるのかもしれませんが、、、

*2:たまにコンビニでお菓子を一桁多く発注して大惨事になったみたいなニュースをみますね。ああいう感じです

*3:これをBullwhip effectという

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