- 作者: 郡宏,森田善久,三村昌泰,竹内康博
- 出版社/メーカー: 共立出版
- 発売日: 2011/09/09
- メディア: 単行本
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章立て
書評
「同期現象」は、まさしく今自分が研究したい分野の一つ。
著者は、数理物理の分野で名のある人ばかり。
メトロノーム*2、ホタルの発光、人間の概日リズムなど、じつに幅広い範囲でその現象は起きている。
非線形数学という数学領域から解析されるこの理論ははっきり言って難解極まりない。
そういった時に、どこまでシンプルにしつつ本質を失わないか。その微妙なバランスの上で研究が進んでいる。両者がうまくバランスされた時、起こる現象を深く知ることができる。
更に、抽象化のもう一つのいいところは、それが特定の系のみならず、幅広く応用ができることである。この本でもあるようにさっき例に上げたメトロノームやホタルの発光同期などは、根本は同じメカニズムからなっているのである。
本書では「位相方程式*3」という形で複雑な現象をある程度記述できることを具体的な数式を用いて書いている。そこから同期現象がなぜ起きるのかのメカニズムについて説明している。
全体的な構成としては、奇数章は物理学者が書いていて、偶数章は数学者が書いている。 ε-δ論法を無視し続けた工学系の自分にとっては偶数章の抽象的な説明はかなり頭が痛くなったが、研究する上ではこういった基礎知識も持っておかなくてはならないのだなと改めて思う。
全体を通して、同期という一つの視点からいろいろなメカニズムが明らかになっているという事に、胸が踊らされた。 数理モデルだけですべてを表せるわけではないが、数理モデルで本質を抽出することができれば、これ以上爽快なことはない。
特に生体リズムはまだまだ解明されていない部分も多く、魅力的な研究領域だなと感じた。